カルロ・ゼン『幼女戦記』戦争が終わらない理由について

2022-06-01

ざっとこんな話

ブラック企業に勤めるエリートサラリーマンが異世界に転生して20世紀初頭に近い世界で戦場に立つ話。ついでに主人公のターニャは色々あってバリバリ前線で戦っているが、幼女である。

極力ネタバレをしない範囲での紹介

魔法のある完全なファンタジーな世界とはいえ、戦術は実際の世界大戦で取られた軍事作戦を基に練られている。章の間には実際の軍事作戦なども風刺とともに紹介されている。
主人公がわりとサイコパス気味なので戦争に対して葛藤する……というような描写が少なく、心理的に重い描写が苦手な人でも読みやすいように思う。「上層部や中枢は何をやっているんだ!!!」とカッカしているシーンの方が圧倒的に多い。

 まともに考えれば西方を搾り上げることで多少の収支改善は図れるとしても、本質的に不採算事業だ。叶うことならば、一刻も早く切り上げる必要がある。
 問題は、たった一つ。
 ……ここまで苦労した以上、見返りを欲する強烈なまでの感情があることだ。

『幼女戦記 6 Niladmirari』より引用

一個人としての戦争に対する感情もそうだが、国家としての戦争のあり方、プロパガンダを通しての民衆の意見、政治的なやり取りなど大枠としての戦争の捉え方が上手い。どうして戦争が終わらないのかを考えさせられる一冊。

長編の小説なので覚悟して読むこと。原作はインターネット上で公開された小説で、いわゆる『俺TUEEE』モノなので戦争を題材にした小説にしては安心して読める。
販売されている小説はまだ未完。

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